1960年代頃のデンマーク製イージーチェア
アームに施したオーガニックな曲線や前方へと上向く傾斜したシルエットが特徴的です。
今回紹介した3台のイージーチェアの中では最も高さが低く傾斜が強いこともあって、一番身体を預けて休むことが出来る印象でした。
特にアームに腕を預けた時に、安定感ももちろんあるのですがそれよりももっと優雅というか気持ちが大きく膨らむような心地?がしてきました。僅かな違いのようでも姿勢や身体の角度が及ぼす影響は体験してみると大きく異なる。思ってもいなかった発見があったりして改めて面白いと感じます。
その他、構造的な違いとして木部フレームには一本もボルトやネジを使わず仕口による接合だけで組み上げている造りでした。金物を使わないこと自体はメリット・デメリットありますが、その構造ゆえのどこか原初的な佇まいが感じられる気がいたします。
クッション内部にはセットスプリングが内蔵されて適度に弾力のある座り心地。沈みすぎることはなく長時間しっかりとくつろぐことが出来ます。
カバーには国産Ribaco NC生地より深いグリーンのファブリックをセレクトしました。
一点、右手側のアーム後方の接合部分にもともと破損がありました。
破損部分はこれまでにも何度か修理されている様子で、既に仕口部分がかなりグズグズになっていました。
可能であればオリジナルの部材を使用したいとも考えましたが、接合部、負荷の掛かる部分のため、破損部分だけ切断して再構築しました。新しく継ぎ足した部材は強度を考えて接着面に木栓を2本仕込んで圧着修理を施しています。普通に使用する分には十分な強度を確保しています。
また今回修理痕に合わせて板目模様の材を選んでみました。仕上がりの予測は難しかったですが、当初の狙いは叶えられたと思い私的には満足しています。修理痕は写真にてご確認ください。
Condition
木部フレームは古い塗装や汚れを洗浄後サンディングを施してからオイル塗装にて再仕上を施しました。
上述したアームの破損部の再構築修理のほか、緩みのあった接合部はすべて解体して圧着修理を済ませています。
ぐらつきなどはなく安心してお使いいただけます。
クッション内部スプリングはバネの間に充填材を詰め直し、バネへの負担を軽減、弾力と耐久性を高めています。
スプリングまわりのウレタンフォーム、クッションカバー、シートを支えるフラットスプリングからクッションを保護するためのキルトカバーまですべて新調し直していますので安心してお使いいただけます。
Daily care
普段のお手入れは、柔らかな布やブラシなどで埃を払う程度のお掃除が基本
たまに風通しの良い場所に置いてあげたり、お部屋の空気を入れ替えるなど清潔な環境を整えることが大切です。
【木部のお手入れ】
乾拭きをすることで表面に残る油分や蝋分が磨き上げられて艶が増す効果が期待できます。
定期的にワックスやオイルを塗布して保湿ケアも心掛けてあげてください。
普段は乾拭き、落ちきらない汚れがある時に固く絞った水拭きを施すなど、塗装表面に負担の掛からないよう様子を見ながら段階的なケアが望ましいです。
【シートのお手入れ】
使用したリバコ社のNC生地はウール20%アクリル80%の組成となります。普段はブラッシングなどで付着物を払い落し、繊維の流れを整えてあげることで生地が備えている防汚性能を維持することが理想です。
ブラッシングでは落ちない汚れが付着した際には乾いたタオルや柔らかな布などで軽く叩いて吸い取り洗い→ぬるま湯を固く絞ったタオルによる叩き洗い→中性洗剤を薄めた叩き洗いなど、こちらもやはり生地に負担が掛からないよう様子を見ながらの段階的なケアが望ましいです。
日常のお手入れ方法もお気軽にご相談ください